きせき


必死なその横顔に、“美青ちゃんの味方だ”と、そう言ってくれたお兄さんの言葉が胸に蘇って。

泣きそうになる。

だけど――……

「だがね、宮崎君!!」

会長の返事を待たず、お兄さんの言葉に声を荒げたのは、“高橋さん”だった。

「宮崎がどれだけの人気選手で、それによる経済効果がどれほどか……っ!! 君だって――……」

「高橋さん」

顔を真っ赤にして、航太の“価値”について語り始めた高橋さんの言葉を遮る、お兄さんの今まで聞いたことのない声が部屋に響いた。

その低い声と、怒りを押し殺す表情に……鳥肌が立つ。

「あなたは一体、何を見てきたんですか?」

「……っ」

もしかしたら、高橋さんもこんなお兄さんを初めて見たのかもしれない。

言葉に詰まった彼は、何も言えないまま。

なおも話し続けるお兄さんを、顔を顰めながら見つめている。

「この子と別れてから――いえ、我々に別れさせられてからの航太を、あなたは見ていたはずです」

「……」

「見ていたはずなのに、見て見ぬふりをした」

そこまで話すと、少し間を置いて――……、

「あなたは、また一人の選手を潰すおつもりですか?」

静かにそう言い放ったんだ。

「わっ、私はねぇ!! 宮崎のためを思って……っ!! それに、またちゃんと活躍してるだろう!!」

「航太のため? 一度潰れかけた航太が立ち直ることができたのは、いつだって、佐々木さんの存在があったからです」

「……」

「それがどれだけ大変なことだったか……。あなたは、それさえも分かっていない」

徐々に静けさを取り戻し、淡々と紡がれるお兄さんの言葉に、何も言い返せなくなった高橋さんは下を向き、黙り込んだ。

「まぁまぁ、宮崎君。高橋さんをそんなに責めてやるな」

「……すみません」

それを止めに入った会長に、お兄さんは小さく謝罪をして、高橋さんに向けていた視線を、ゆっくりと正面に向けた。