「昔の話は私も聞いたことがあった。それに対する、こちら側が下した判断も知っている」
“あの頃は宮崎もまだ、子供だったからな”
茫然とする私の目の前でそう付け加えた吉田会長は、つまり、あの時の幹部の判断を肯定しているということで――……。
「……っ」
カラカラに乾いた喉が、ゴクリと鳴った。
「佐々木さん」
「はい……」
自分の声が、まるで自分のものではないみたいに、掠れて聞こえる。
「宮崎は、今はもう大人だ」
「……」
「だから、君達が今どんな関係だとしても、そこに口を出すつもりはない」
何も言えない私の目を真っ直ぐ見ながら、そう続ける会長。
「ただ、今は、君も知っての通り大事な時期だ」
「はい」
「もし今も交際をしているとしたら……。宮崎はいいかもしれないが、それを知った周りは、色々とやりにくくなるかもしれない」
「そんな……っ!!」
だって、何も知らないのに酷すぎる。
それがわかっているから、私は……。
感情が抑えきれなくなった私は、思わず席を立ち、声を上げた。
「確かに、あの頃は宮崎君と付き合っていました。ですが、今は……っ」
そこで言葉に詰まった私を、会長が静かに見上げる。
――“今は”?
付き合ってはいない。
でも、今でも好きだという気持ちに変わりはない。
「……」
それって結局は、同じこと?
そんな考えが、脳裏をよぎる。
「“今は”?」
「今は――……」
そこから何も言えなくなって。
握りしめた手が、小さく震える。
なんで――……?
私たちが、一体なにをしたって言うの?
あの頃だって、今だって……。
悔しくて、思わず唇を噛みしめた時だった。

