きせき


想定外だったとはいえ、こんな形で私たちのことに巻き込んでしまった目の前の正樹に、どこまで話していいのか……。

まだ混乱している頭を整理するために、ゆっくりと息を吐き出した私は、ポツポツと、ここまでの経緯を話し始めたんだ。

正樹と別れた時に航太はその場にいて、正樹のことを知っていたこと。

その後、航太と付き合っていたこと。

そして、協会から下された判断と……別れるために、航太も知っている正樹の名前を使ってしまったこと。

それを包み隠さずに話した。

「酷いことするな……」

静かな口調で私に向けられたその言葉に、ただ頭を下げることしかできなくて……。

「本当にごめんなさい」

そう口にしてゆっくりと頭を上げると、正樹はキョトンとして、

「え? 何が!?」

心底驚いた様子で、そう聞き返してきた。

「だって私、勝手に正樹の名前を使って……」

「あ~! 違うよ。“酷いこと”をしたのは協会の方だろ?」

「え?」

「さっきのは、美青に対して言った言葉じゃなくて」

そこでいったん言葉を切った正樹は、まるで何かを思い出すように目を細め、小さく息を吐き出すと、再びその口を開いたんだ。

「俺は美青が好きだった」

「……」

「今でも、もしかしたら好きなのかも」

「え?」

それはまるで私の反応を窺うような表情で、眉根を寄せた私は、思わず正樹を凝視してしまう。

「――ってのは冗談で」

「はっ!? 何それ!!」

「いや、美青があまりにも緊張してるから……つい」

クスクスと笑う正樹はとても楽しそうで……。

不貞腐れて唇を尖らせれば、また楽しそうに笑われる。

「まぁまぁ、それはいいとして。俺こそ昔、美青に酷いことをした」

「……酷いこと? 正樹が?」

正樹はいつも優しくて、いつだって私を想ってくれていた。

だから、その言葉の意味が私には理解できない。

「あんなにも俺のことを想ってくれて、好きでいてくれた美青の気持ちに気付いていながら、俺は美青を置いてきぼりにした」

「それはっ……!!」

「いいから、最後まで聞いて?」

そう言われて、私は納得がいかないまま口を噤む。