きせき


な……に?

今のは本当に航太?

まるで別れる前の航太のようなその言動と表情に、頭がすっかり混乱している。

だけどそれとは裏腹に、なぜか心臓だけはトクトクと心地いい音を立てていて……。

まさか、熱でおかしくなった?

でも――……。

“覚悟しといて”

そう言って笑った航太の瞳は、あの頃の彼のものと、まるで同じ。

「俺も少しは役に立ったかな?」

「……っ!!」

未だ呆然と立ち尽くす私の背後から、急に聞こえた正樹の声に驚いて振り返った。

「でも、こんなとこであれはマズイよな」

言葉とは裏腹に楽しそうに笑うけど、それに気が付いた私は、ハッとして周りを見回す。

――だって、誰かに気付かれたら……。

そんな私の心中を察したのか、正樹は、

「大丈夫。気にしてる奴はいなかったよ」

そう言って私を安心させるように笑みを浮かべた。

「どっか座って、朝メシ食いながら話そう」

周りを少し見回した後、正樹は人目につきにくい柱の陰の席を見つけ、私の返事も待たずに歩いて行く。

「さて、何から話そうかな」

戸惑いながらも、言われた通り席に着いた私を見据え、ゆっくりとそう口にした。

「美青?」

「……うん」

「俺と美青って、付き合ってるの?」

正樹のその言葉に、ドキリとした。

「誰から……それを?」

「あぁ、宮崎君からちょっとね」

航太から?

二人は何でそんな話を……。

まさかそこに繋がりがあるとは思っていなくて、瞳を泳がせた私とは正反対に、正樹は相変わらず真っ直ぐな瞳で私を見つめる。

「ごめんなさい」

「ん? 何で謝るの?」

「だって、正樹は関係ないのに、巻き込んだりして……」

「……」

「もう正樹とは会わないと思ってて、」

「うん」

一体何から話せばいいのか、きちんと頭の中を整理しきれない私に、正樹は、

「ゆっくりでいいよ?」

小さく笑って、トレーのサラダにフォークを伸ばしながら、そう声をかけた。