きせき


眠り続ける美青を眺め、そっと手繰り寄せた髪にキスを落とす。

そのままもう一度その頬に触れようと伸ばした指が、

“コンコン”

ドアを叩く小さな音に、ピタリと止まった。

「……っ」

暗い部屋の中、俺は息を呑んだ。

俺の期待を裏切るように、再び部屋に響くノック音。

“コンコン”

時計に目をやると、時間は夜中の1時を少し過ぎた辺りで……。

――こんな時間に、仕事か?

一度はドアに向けた視線を美青に戻すが、目を覚ます気配はない。

ドクドクと鼓動を速める心臓の音は、外まで聞こえてしまいそうで、ゆっくりとベッドから起き上がった俺は、ドアに向かって静かに歩いた。

“コンコン”

再び叩かれたドア。

「……」

息を殺して、覗き穴から外の様子を窺う。

ドクン――……。

胸が大きく軋んで、そこに、ぎゅっと握りつぶされるような感覚が走る。

俺の目に映ったのは、扉の外で小さく首を傾げる多田さんの姿だった。

どんどん速くなる鼓動。

それに耐え切れず、拳をグッと握りしめた。

“コンコン”

再び叩かれたドアに、ゆっくりと手を伸ばす。

ダメだ――……。

それはわかってる。

普通にダメだろう。

俺は、何考えてるんだ?

ダメだ。

「……っ」

頭の中には警告音が鳴り響いていて、自分が今からしようとしていることを、なんとか阻止しようとしている。

だけどその意志とは裏腹に、俺の手はドアにかかったカギを開け、ゆっくりとノブを回していた……。