「――んっ」
喉に小さな痛みを感じた俺は、小さく咳払いをして目を覚ました。
「……」
ここは……どこだ?
よく眠ったおかげか、だいぶ軽くなった上半身。
ゆっくりと体を起こすと、おでこに乗っていた何かが、パサッと落ちた。
――タオル?
それは小さく折りたたまれた、ホテルに備え付けられている白いタオル。
状況が全く掴めずに、ゆっくりと周りを見回す。
俺の部屋じゃない……?
薄暗いその部屋はキレイに整頓されていて、疲れていたせいでグチャグチャになっていた俺の部屋とは全く違う場所のようだった。
首を傾げ、眠る前のことを思い出そうとしたが、鈍い痛みが残る頭はなかなか上手く働かない。
あの時、廊下で――……。
「――……っ!!」
ぼんやりと、微かに残る記憶をたどった俺を、懐かしい香りがフワッと包み込んだ。
あぁ、そうだ。
あの時俺は……。
視線を落とした俺の横。
ベッドに突っ伏して眠る、美青の姿を見つけたんだ。
落ち着いていた鼓動が、再び速まるのを感じる。
俺に寄り添うように眠る美青の横顔はあの頃と同じで、その幸せそうな寝顔に思わず指を伸ばしそうになる。
“美青に触れたい”
ただ純粋に、そう思った。
「美青?」
「ん……っ」
小さく反応したものの、俺の呼びかけにも目を覚ます様子はない。
もう触れることはできないと思っていた美青。
「……」
ゆっくりとその頬に触れ、唇をなぞり、そのまま、あの頃より長くなった髪に指を絡ませる。
すると、またフワッと香った美青の香りに、胸がそれまで以上に大きな音を立てたんだ。
美青。
やっぱり、“忘れる”って難しいんだな。
それが、大事なものであればあるほど。

