きせき


――薬が飲めない?

それが、薬が苦手だからとか、好きじゃないからとか、そんな子供じみた理由ではないことはわかったんだけど、それでもその真意がわからない。

戸惑う私の気配に気づいたのか、航太はまた一つ大きく息を吐き出して、

「風邪薬……ドーピングで引っ掛かる」

静かに、そう言ったんだ。

「そう……なの?」

「あぁ」

そこまで言うと、目の上に腕を乗せ、

「美青、ごめんな」

また苦しそうに顔を歪めて、ゆっくりと眠りに落ちていった……。

――航太。

眠りについた航太の額の上のタオルは、すぐに温かくなってしまって、航太の熱の高さがよくわかる。

少しでも航太が楽になるように、温かくなるたびに、私はそれを冷やしてまた額にそっとのせた。

「……んっ」

小さく反応は示すものの、さっきよりも深い眠りについたらしい航太が、起きる気配はない。

“薬が飲めない”

その言葉を思い出して、改めて航太の住む世界の厳しさを知った気がした。

だからこそ、いつもあんなに体調管理に気を付けてたんだ。

汗もかいてるし、本当は着替えさせた方がいいんだけど……。

今の私が、それをするわけにもいかないし。

せめてこれくらいはと思い、タオルで拭ける部分の汗だけ拭いながら、その髪にゆっくりと指を通して、後ろに流す。

航太……。

ただ、航太にこうして触れるだけで、涙が出そうになるのは何でなんだろう?

なんでこんなに傍にいるのに――……

私はこの気持ちを、伝えられないんだろう。