きせき


航太……。

航太のその表情を見て私の視界が滲むのは、航太の傍に居られない自分が――何もできない自分が、悔しいから。

こんな状態でも、誰にもそれを悟らせることなく、ひとりで耐える航太。

彼は、クスッと笑って、

「泣くなよ」

そんなことを言うんだ。

辛いはずなのに、私を安心させようとしてるんでしょう?

「……」

航太。

「ゆっくりでいいから、立って?」

そう言って、しゃがみ込む航太の腕の下に、自分の肩を入れる。

いよいよ辛くなってきたのか、無言でゆっくりと立ち上がった航太に、もう一度声をかけた。

「ちょっとだけ頑張って歩いて」

「……美青?」

“美青”

こんな時なのに、航太の口から紡がれるその言葉に胸が高鳴る。

ドキドキドキドキと、心地のいい音を立てる。

“佐々木さん”

“美青”

もう……ぐちゃぐちゃだよ。

半ば強引に航太を歩かせた私は、自分の部屋の扉の前で立ち止まり、ポケットからカードキーを取り出してロックを解除する。

カチャリという音が、静かな廊下にやけに響いて聞こえた。

横の航太を見ると、意識が朦朧としているのか、目を瞑ったまま短い呼吸をくり返すだけで……。

もう何も言葉は発しない。