航太、どうしたんだろう。
みんなを送り出した後、自室で仕事をしていた手を止めて考え込む。
お兄さんにこっそり聞いたら、
「寝坊したから、部屋で朝食取りたいって電話かかってきたんだ。緊張感ねぇなぁ」
そう言って苦笑してたけど……。
航太は、サッカー関係のことでは絶対に寝坊も遅刻もしないし、むしろ、いつもよりも早く起きて身体を起こしてからグラウンドに向かうような人のはず。
少なくとも、私と付き合っていた頃はそうだった。
だから何だか、違和感を覚える。
時差が9時間もあるから、時差ボケ?
でも、今までだって海外遠征はしてきたはずだし……。
「ん~……」
思わず唸って、また手を止めて考え込んだ。
結局その日の仕事はなかなかはかどらなくて。
こんなことではダメだと思いながらも、戻って来た航太の姿を見たら、やっぱりどこかホッとしてしまった。
みんなが帰って来たのは、もう外が暗くなってから。
出迎えたその集団の中に、航太も当然いたんだけど……。
――やっぱり何かおかしい?
コーチが話している間も、ロビーにあるソファーの背もたれに寄りかかり、俯いたままじっとしている。
そして、解散の号令がかかるのと同時に、カバンを肩にかけて、ゆっくりと歩き出す。
その様子は、いつもと変わりないようにも見えるけど……。
少し俯いたまま歩く航太と、その場に立ち止まったままの私。
少しずつ、その距離が縮まる。
「……っ」
息を呑んだ私の肩に“トンッ”と航太の肩がぶつかる。
それに気が付いて、少し顔を上げた航太。
ドクン。
少し潤んだ瞳が私に向けられて、
「すいません」
小さくそう呟くと、そのままスッと私の横を通り過ぎた。

