きせき


「美青がよりを戻すって言ってたの、本当だったんだな」

そんな私の目の前で、航太は悲しそうに、笑った。

「……っ」

違う。

航太は、誤解してるんだ。

確かにあの頃、嘘をついたのは私だ。

だけど、あの日から昨日まで、正樹に会うことなんて一度もなくて。

自分がしでかした事なのに、航太に誤解されているのが苦しかった。

口を震える手で覆う私から、視線を逸らすことのない航太。

「俺さ、昨日の二人を見るまで、美青ともう一回やり直せたらって思ってたんだ」

「こう……た」

「でも――……」

そこで一旦言葉を止めて、一度大きく息を吐き出して、

「一緒にいる二人を目の当たりにしたら、やっぱり諦めるしかないんだって思い知った」

まるで何かを覚ったように笑ったんだ。

“違う”

そう言いたいのに、上手く口が動かない。

私は、ただ小さく頭を振ることしかできなくて……。

そんな私に、航太は優しい笑みを浮かべたまま、最後の一言を口にしたんだ。

「美青。俺、美青のことちゃんと諦めるからさ、」

「……」

「だから、そんな顔しないで」

……航太。

「多田さんに、嫌な思いさせない為にも」

航太、

いやだよ――……。

「俺達の為にも」

お願い、航太……っ

「昔の事は、全部忘れよう?」

動けないでいる私の頬を、涙が静かに伝い落ちた――……。