きせき


そのままその手を握りしめた航太は、苦しそうに顔を歪める。

「こう……た?」

思わず私の口からこぼれてしまった言葉に、驚いたように目を見開いた航太は、そのままスッと手を下ろした。

「美青」

「……うん」

「俺さ、」

戸惑いを隠せない私の目の前で、一度伏せた瞳を開いた航太が、ゆっくりと話し始める。

「本当はどっかで、美青のあの時の言葉が嘘なんじゃないかって……ずっと思ってたんだ」

「え?」

「俺と別れた時、」

「……」

「“マサキサン”とよりを戻すって」

彼の口から紡がれる言葉に、胸がひどく痛む。

「俺、ずっと美青のこと諦めきれなくてさ」

「……え?」

そこまで言うと、航太は俯き、小さく息を吐きだした。

「“マサキサン”って、多田さんだろ?」

「……っ」

――なんで?

なんで、航太がそれを知ってるの?

航太の一言に、私はただただ驚くことしかできなくて、上手く頭が回らない。

そんな私の様子を見て、少し笑った航太は、

「昨日、2人で談話室にいるとこ見かけた」

私の疑問に答えるように、静かにそう告げたんだ。

うそ……。

だって、それって――……。

「話し」

「え?」

やっと言葉を発した私に、航太が少し驚いたように聞き返す。

「話、聞いてたの?」

「あぁ、悪い。少しだけな」

聞かれてたって、なにを?

“少し”って、一体どこからどこまで?

頭の中に、また言葉にはできない疑問がたくさん湧き上がっては消えていき、心臓が痛いくらいにドクドクと鼓動を速め出す。

「二人が一緒にいるとこ見て“あー、俺の自惚れだったんだ”って」

「……え」

航太の思いもよらない一言に――……

私は無意識のうちに、小さく首を振っていた。