きせき



よくわからないけれど、なぜか逃げ出したくなってきた。

でも昨日、試合後の身体が冷えると困るとかって言ってたし。

何より、ジャージを返さなきゃだし……。

色々考えたけれど、結局は彼を待つしかないという考えに至った私は、また溜息をついて手に持ったままのカップに視線を落とす。

だけど、どれくらいしたら来るんだろ……?

勝手なイメージだと、試合の後ってミーティングとかをしそうなイメージ。

その後かな?

まぁ、悩んでも仕方がない。

スーツの兄さんとも約束しちゃったし、待つしかないよね。

自分のそんな切り替えの早さを褒めつつも、さっきの――ゴールを決めた瞬間の宮崎航太を、ぼんやりと思い出していた。

トクン、トクン。

また胸の辺りがざわついて、思わずさっきと同じように、そこにそっと手を添える。

――その瞬間。

「ごめん!! 遅くなった!!」

ふわりと香るせっけんの匂いと共に、宮崎航太の声が聞こえた。