きせき


「……」

部屋を出て、エレベーターに乗り込んで、談話室の扉の前にたどりついたところで思わず立ちすくんだ。

――あぁ、やっぱり。

そこにあったのは、もう何年も見ていなかった正樹の姿だった。

もっと動揺するかと思ったのに、頭の中は意外と冷静で、自分でも驚いたんだけど、

「はぁー……」

それでもやっぱり、口をついて出る溜め息は仕方がない。

今更なにを話せばいいの?

大体にして、あんな別れ方をした私に対して、正樹が普通の態度を取ってくれるんだろうか?

でも……。

これは仕事だ。

一度深呼吸をして、そのノブに手をかけた私は、それを一気に引き開けた。

「失礼します」

「あぁ、美青ちゃん」

私に気付いて、少し手を上げたお兄さんの隣。

驚いて目を見開く正樹に、ゆっくりと頭を下げた。

「み……お?」

「え?」

静かに私の名前を呼んだ正樹に、お兄さんが反応して……。

私たちの顔を交互に見比べた。

「美青ちゃんと多田は、知り合い?」

「はい」

「そうだったんだ。いやー、驚いた。凄い偶然だな。なぁ、多田!」

「そう……ですね」

振り返ったお兄さんに少し遅れて反応した正樹は、ゆっくりと視線を上げ、立ったままの私を見上げた。