きせき

「あの人、写真撮ってるけどマスコミじゃねぇの?」

「あぁ、あの人はうちのお抱えカメラマンらしいよー」

「へぇー……」

肩にいくつもかけたカメラを、とっかえひっかえしながら写真を撮るその人から、俺はなぜか視線を逸らすことができずにいた。

「俺も初めて見たけど、一年くらい前からうちでやってるみたいよ」

「そうなんだ」


「結構面白い人らしくてさ、先輩たちとも仲いいみたいだし」

「ふ~ん」

「何てったっけ……。多田サン?とかいったかな」

「お前、そーいう情報に無駄に詳しいよな」

「無駄じゃない! 航太、よく聞け? 人と人の繋がりってのはね……」

「あ~、もういい。練習しろよ」

「えぇー!! 航太が聞いてきたんだろ!?」

「そうだっけ?」

「ふざけんなハゲ!!」

「ハゲてねぇし。むしろお前の方が薄いし」

「な……っ!! 許さん!! マジで許さん!!」

この男は、本当に練習する気がないんだろうか?

それからしばらくの間、稜はコーチの目を盗んでは俺に文句を言い続けた。


この時、俺は――……

全く気付いていなかった。

いや、

気付けるはずもなかったんだ。