きせき


次の日から、選手選抜の合宿が始まった。

「あ゛~~!! きっちぃーなぁ!! 航太ぁー……」

「……」

「なぁ~~! 航太ぁー……」

「うるさい」

「あ~?」

「お前うるさい。黙って練習しろ」

「……冷たいなぁ、航太はー」

「はぁー……」

目の前のそいつの不貞腐れたような表情に、大きな溜め息が洩れる。

代表候補で唯一同い年の川崎 稜《かわさき りょう》は、さっきからずーーーーっとこの調子でグチグチグチグチ……。

うるさいったらない。

「だったらお前、辞退しろよ」

「えぇ~、それはヤダ」

「だったら黙って練習しろ」

「ぶぅ~……」

こんなふざけた男でも実力は確かで、“次世代を担うMF《ミッドフィールダー》”なんて言われていて……。

この男に担わせるのはどうかと思うが、実力があるから何ともなぁ。

やかましい稜とコンビを組まされて、基礎練習をしないといけない俺の身にもなって欲しいよ。

また大きな溜め息を洩らして、縋るような視線をピッチサイドのコーチ陣に向けてみるけど、それに気づくはずもなくて。

ただその代わり、

「あれ?」

俺の瞳に映ったのは、別のものだった。

「どしたぁ~?」

「いや、今日って非公開練習じゃなかったか?」

「そうだよん」

視線の先には、選手にドデカいカメラを向けて、真剣な顔でシャッターを切る一人の男がいて……。