きせき


そんな余裕のない俺に、

「でも、お前がタラタラしてたら、そのうち俺の気持ちも変わるかもしれないな。あの子、ホントいい子だもんなぁ」

兄貴は一つ爆弾を落とす。

「俺じゃなくても、美青ちゃんだったらいろんなヤツにモテるだろうし。まぁ、時間の問題だな」

反撃もしていない俺に、ついでにもう一つ爆弾を落とすと、まるで何事もなかったかのように“じゃ~、帰るわ”と、俺の部屋を後にした。

そんなことがあったから。

ないと思いつつも、無駄に兄貴と美青のことが気になるんだ。

飛行機の中でも、なぜか隣の席同士だった二人。

資料を見ていたから、仕事の話をしてるのはわかるけど……顔近づけすぎだろ。

そんな自分でも恥ずかしくなるような事を思っている俺を、チラリと見た兄貴は、絶対に俺の反応を見て楽しんでいたに違いない。

「くっそー……」

おかげで目の前で流れてた映画の内容なんて全然覚えてねぇし。

いろんなことを思い出して、頭の中がモヤモヤして。

スッキリするわけでもないのに、頭をガシガシと掻きむしる。

「はぁー……」

気持ちを静めるように、大きく息をひとつ吐いて、ゆっくりと目を閉じた。

美青のことは、正直かなり気になる。

でも、ここに来た目的はそれじゃない。

もう一度ゆっくりと息を吐き出した俺は、静かに目を開けて、天井に伸ばした手をギュッと握りしめた。

――絶対にA代表に復帰する。

それが今の俺の一番の目標でもあったし、何よりも、美青ともう一度向き合う前に、きちんと前に進んでいるという自信が欲しかった。

だから、このチャンスを逃すワケにはいかない――……。