きせき


――ヤキモチ?

自分の部屋に入って荷物の整理を終えた私は、ベッドの上にゴロンと寝転んだ。

“ヤキモチ”って何よ?

お兄さんと、嫌いな私が仲良くしてるのが気に入らないのかな……?

さっきから、たどり着く結論はそんなものばかりで、ちょっと気持ちが沈む。

でも、頭をブンブン振って、その考えを打ち消した。

――航太はそんな人じゃないし。

こんな風に、ひどいことを考えてしまう自分が嫌になる。

「はぁ……」

大きな溜め息が、ひとりで過ごすには大きすぎる部屋に吸い込まれていくことに、無性に不安になってしまって。

お風呂にでも入ろうかと立ち上がった瞬間、

RiRiRiRiRi――……

部屋の中に響いた、電話の音。

「びっくりしたぁ……」

ボーっとしていた私は、それにもの凄く驚いて、バクバクと音を立てる心臓を押さえながら、受話器を耳に当てた。

「はい、佐々木です」

誰だろう?

脳裏に一瞬、航太の顔がよぎる。

「もしもし? 美青ちゃん?」

「……お兄さん?」

だけど、受話器から聞こえてきた声は、お兄さんの声で。

ほんの少しでも期待した自分が恥ずかしくなって、熱くなった頬に思わず手を当てた。

「ごめんね。休んでた?」

「いえ、ちょうど荷物の整理が終わったところだったので!」

「そっか。……ちょっとさ、急で申し訳ないんだけど、このホテルの部屋ってもう一部屋取れないかな?」

「え?」

「本当は来られない予定だったスタッフが、急遽来られるようになったみたいで」

「そうなんですか。ちょっと確認してみます」

「悪いね。頼むよ! もし無理だったら、俺と相部屋でいいから」

「わかりました。確認でき次第、折り返しますね」

お兄さんからの電話に、すっかりオフになっていたお仕事モードをオンにした私は、電話を切ると、すぐにフロントに向かったんだ。

この後――……。

思いもよらない人と再会することになるなんて、この時の私は、知る由もなかった。