きせき


「よ~し。全員集まったな~!」

その日、相変わらずのんびりした口調の会長の声が響く大会議室で、兄貴の隣に座る美青を見つけたんだ。

逢った瞬間、もっと混乱するかと思った俺の思考は、意外と平静を保ったままで……。

“あぁ、美青だ”

よくわからないけど、そう思った。

髪が伸びて、あの頃より少し痩せた彼女を、つい目で追ってしまう。

手に持っている資料を、兄貴と一緒に覗き込む彼女。

その髪に、頬に、唇に――……

こんなにも触れたいと思ってしまう自分は、やっぱりまだ美青が好きなんだってことを、嫌というほど思い知らされる。

ずっと逢えなかったのに、忘れようと心に決めた途端これだ。

――やっぱり神様って奴は、ろくでもない。

「佐々木美青です」

凛として自己紹介をする彼女。

ゆっくりと周りを見回しながら、自分の業務内容を説明するその姿に、つい見入っていた。

その俺の視線と、

「――……っ」

彼女の視線が、ぶつかった。

その瞬間、戸惑ったように視線を伏せた美青。

「……っ」

兄貴とはあんなに普通に話すのに、俺とはもう、視線も合わせてくれねぇのかよ。

再び席に着いた美青と兄貴が談笑している様子に、胸がバカみたいにチリチリと痛む。

“美青ちゃんに関わらないでやって欲しい”

それと同時に、この前の兄貴の言葉が頭の中で何度もリピートされる。

まさか兄貴は……美青のこと?

「……」

頭の中がゴチャゴチャになって、くだらないことを考える自分に嫌気がさす。

思わず自分の髪をクシャリと掴み、下を向いて溜め息を洩らした。

――んなワケないよな。

モヤモヤする、目には見えない何かを振り払いたくて。

小さく頭を振ると、話をする会長に視線を移した。