「あちー……」
風呂から出た俺は、首にタオルをかけたままキッチンに向かい、冷蔵庫からミネラルウォーターを1本取り出した。
キャップを開けて水を口に含みながら、いつものように雑誌でも読もうとリビングに目を向けて――……
「ぶっ!!……ごほぉっ!!」
思いっきり噴き出しながら、噎《む》せ返った。
「よぉ。何やってんだお前?」
目の前のソファーには、なぜか兄貴の姿。
しかも、俺が咳き込んでいるこの状況が、自分のせいだとは全く思わないようで。
眉根を寄せて、怪訝そうな視線を俺に向けている。
「……それは、俺のセリフだけど?」
未だに気管に残る何かをゴホゴホと吐き出しながら、そう口にした。
「つーかさぁ、何でまた俺の部屋のカギ持ってんだよ!!」
美青と別れてから、何故か毎週のように俺の部屋に勝手に忍び込むようになった兄貴は――……
今日のように突然ソファーに腰掛けてたり、人のパソコンを勝手にいじっていたり。
ある時はエプロン姿で夕飯を作っていたり。
その度に俺がカギを没収するのに、こいつは職権を乱用して、協会が管理するこの部屋のカギをどこからか手に入れてくる。
「そのうち訴えてやる」
ボソッと呟いた俺の言葉を、聞こえているくせに無視した兄貴は、
「ホレ、土産」
そう言って、ペラペラのプリントのようなものを差し出した。
「あ? なんだよ。てか、人の話聞けよ」
ブツブツと文句を言いながら、目を落としたその紙切れには、
“2014年 ワールドカップ 代表候補選手”
そう書かれていて。

