きせき


「これから先も、私はきっと航太が好きです」

「……あぁ」

「それで私、今25歳なんですよ」

「え?」

突然の話の転換に、お兄さんが驚いた声を上げるのは当たり前で。

そんなお兄さんをよそに、私は話を続ける。

「人生80年! あと55年もあるんです」

「……」

「もし航太の運命の人が私だったら、また巡り合うには十分な時間がありますから! だから、気長に待ちます」

「――美青ちゃん」

「私は、大丈夫ですよ!」

“だから、もうそんな顔はしないでください”

そう付け足したかったけど、きっとお兄さんはもうそれに気づいているから。

だから何も言わずに、私はまた笑顔を浮かべたんだ。

「それからもう一つは、前にお兄さんに言われたことなんですけど」

「仕事のことを航太に話すか?」

「はい」

「……」

「やっぱり、話してもらってもいいですか?」

「あぁ、わかった」

「すみません。お兄さんに、こんな嫌なことを頼んでしまって」

申し訳なさから、ほんの少し俯いた私の頭に……温かい手がポンッと乗っかった。

「そんなの、何でもない」

「……」

「俺は、もっとひどいことをしたんだ。だから美青ちゃんが気に病むことは何もないんだよ」

そう言って、優しく笑うから――……

まだ壊れて緩んでるらしい涙腺から、涙が溢れてしまうんだ。

「やだなぁ、もー……。最近涙腺にガタがきてるっぽいんですよ」

鼻までズビズビとさせながら涙を拭うと、目の前には少しだけ昔に戻ったお兄さんの笑顔があった。

「さっ、宮崎さん! お仕事の続きしましょう!!」

だから私も、やっと心からの笑顔をお兄さんに向けることができたんだ。

「そうだな。よし、やりますか!」

そう言って笑ったお兄さん。

これからのことを考えた時、不安がないと言えば嘘になる。

でも、お兄さんとの蟠《わだかま》りが解けたことで、心がすごく軽くなったのは事実だった。