宮崎さん。
航太の……“お兄さん”。
「お兄さん、ありがとうございます」
ほんの少し笑いながらそう言った私を、目をまん丸にして見つめたお兄さんは、
「美青ちゃん、ごめん。……ありがとう」
下を向いて、わずかに震える声で、そう呟いた。
あけちゃん。
やっぱりこの人はいい人だよ。
だってね、きっとずーっとひとりで苦しんでいたんだ。
自分の意志を通すこともできない立場で、航太にも嘘を吐いたまま。
「お兄さん。二つだけ、お願いがあるんです」
「うん」
「一個目は……あの時の話を今後も航太にはしないでください」
「……」
「航太は、これからもここでサッカーを続けるんです。それなら、絶対に知らないほうがいいと思うんです」
「でも、それだと美青ちゃんはずっと誤解されたままだ」
そう言って、グッとその表情を歪める。
「はい」
「それなら……」
「でもっ!!」
私をかばうような発言をしようとしたのであろうお兄さんの言葉を遮り、私は話を続けた。
まだ伝えたいことが、たくさんある。
これがお兄さんの気持ちを楽にできるかはわからないけど、きっと私にしかできない事だと思うから。
「航太なら、いつかわかってくれる気がするんです」
「美青ちゃん――……」
「私は、今でも航太が好きです」
「……っ」
悲しそうに、“何と言えばいいのかわからない”そんな表情をしたお兄さんが気にしないように、私は笑顔を向けた。

