「大丈夫だよ」
それはきっと、あけちゃんに向けられた言葉でもあり、自分自身に向けた言葉でもあったんだと思う。
「でもさ?」
「うん?」
「もし……もしもね、航太君がA代表に選ばれたら?」
「……」
「調子悪いって言っても、今年だって得点王だったし、その可能性だって十分にあるでしょ?」
――それは、わかってる。
考えないようにしているけど、その可能性だって当然あるんだ。
「……」
言葉に詰まって、何も言えなくなった私の様子を窺うあけちゃんは、そのまま思わぬことを口にした。
「ねぇ、美青?」
「……ん?」
「航太君に、逢いに行ったら?」
「え?」
「だから、航太君のとこ行って、誤解を解いてきたらいいじゃん!! あの頃の高校生の航太君と、今のプロの航太君では立場が違うでしょ?」
「……」
「もう立派な大人なんだから、協会だって口出しできないよ!!」
身体を乗り出して、名案だとばかりにそう言ったあけちゃん。
でもね、あけちゃん。
それって違うと思うんだ……。
「今更なにを言えばいいの?」
「え?」
「“あの時は、協会側から別れるように言われて別れました”」
「……」
「“でも、本当はずっと好きでした”、“忘れられませんでした”」
「……美青」
「“だから、あの時あなたを傷つけたことは忘れて、もう一度私を見てください”」
――そこまで言って、言葉に詰まってしまった。
「美青、泣かないで」
「……っく」
「ごめんね。……ごめん」
私の頭を撫でながら、謝るあけちゃんに首を振る。
あけちゃんは、何も悪くない。
悪いのは、
悪かったのは――……
あの頃の、弱かった自分だ。

