きせき


唾を飲み込む喉が、ゴクリと鳴ったのが自分でもわかった。

――何でここにいるの?

よりによって、何でこの人が。

ドクドクと音を立てる心臓の音が、耳元でやけに大きく聞こえる。

落ち着け。

今は仕事中だ。

「……」

何か言わなきゃ。

震える指を、ギュッと握った。

「はい。お久しぶりです……“宮崎さん”」

“宮崎さん”

やっとしぼり出すことのできたその言葉に、お兄さんが一瞬悲しそうな顔をしたのが見えた。

だけど、それ以外の呼び方なんて見つからない。

見つかるはずなんかない――……。