きせき


「失礼致します。M·Kツーリストの佐々木美青です。よろしくお願い致します」

簡単な自己紹介をして、もう一度頭を下げた私の前に、白い髭を生やしたちょっと恰幅のいい男の人が近寄ってくる。

目の前まで歩み寄ったその男の人は、私の目をじっと見つめ、すぐに柔らかい笑顔を作って、

「初めまして、佐々木さん。今日はご足労いただいて申し訳ない。会長の吉田と申します。よろしくお願いします」

そう言いながら大きな手を差し出した。

「いえ。こちらこそ、よろしくお願い致します」

感じの良さそうな人の登場に、ほんの少し緊張が解けた気がした。

「さぁ、佐々木さんをお席までご案内してくれ!」

近くにいたスタッフに、そう声をかけた吉田会長。

「では、まだ来ていない者もいるが……。もう時間になるから、会議を始めよう」

それからすぐにそう言って、いかにも“会長の席”という場所に用意された椅子に腰かけた。

会議は通達通り、簡単な顔合わせで。

特に滞る要素もなく、淡々と進められていく。

まだ心に引っかかりはあるものの、仕事だと割り切るしかないし、やり甲斐はありそうなこの仕事。

頑張ってみよう。

そう気合を入れた時だった――……。

「すみません。遅くなりました」

ゆっくりと開いた、会議室の扉。

ドクン。

瞳に映ったその光景に、私の心臓は大きな音を立てた。