「はぁー……」
大きな溜息を洩らした私の目の前にあるのは、重たそうな扉。
いや、きっと実際にはそこまで重くないんだろうけど、この気分のせいで、重厚なものに見えてしまう。
その扉は“協会”の本部にある会議室の扉……。
この建物の入口をくぐるだけでも、かなりの数の妖精さんを犠牲にしたのに。
ここでもまた……。
ごめんなさい、妖精さん。
でも、今日は仕方がないんです。
許してください。
もう頭の中はパニックで、ついつい、妖精さんに頼って何とか平静を保とうとする私は……相当やられているワケで。
知ってる人なんていないのはわかってるけど、それでも気分は鉛のように重たい。
こんな大事な仕事の時って、普通最初くらいは上司とかは一緒に来るもんじゃないの!?
大体、なんでこの規模の仕事に、窓口になるスタッフが私ひとりなの!?
絶対におかしいよね!?
いや、おかしいよ!!
会議室の扉の前で、ひとり激しく自問自答する私。
でもこんなことをしていても、会議の時間はどんどん迫ってくる。
今後、仕事を一緒にさせてもらう私も参加することになった初顔合わせのこの会議。
だけど、気が重いのは言うまでもない。
むぅー……、よしっ!!
気合を入れた私は、軽く扉をノックして、その部屋の中に足を踏み入れた。
「失礼致します」
頭を下げると、中にいた数十人の視線が集まるのを感じる。
顔を上げ、思わずその顔を見渡して……。
知っている顔がないことに、少し胸を撫で下ろした。
もちろん、知っている顔なんてあるはずがないのだけれど。
――“あの時”だって、お兄さん以外の人はひとりも来なかったんだから。
また昔のことを思い出して、重たくなった気持ち。
それを振り払うように、ひとつ深呼吸をする。

