きせき


「そうか! それはちょうどよかった! 私は海外経験もある君が、適任だと思うんだ」

「は……い?」

この人は、どうやら私にその仕事の説明をするつもりがないらしい。

「よしよし」

そうひとり納得した常務は、放っておくと説明もないまま話を終わりにしそうな勢いで、

「あのっ! どういった内容の業務なのでしょうか!?」

つい勢いよく質問を投げかけてしまった。

「お~、そうだな! 説明を忘れるところだった!」

“はっはっは!”と、ひとり呑気に笑いながら、その気持ち良さそうなお腹を震わせた常務。

これは、笑うところ?

私には、よくわかりませんでしたが……。

出世するには、一緒に笑っておいた方がいいのでしょうか?

つい白い目を向けかけた私。

だけど、次に常務の口から発せられた言葉は、そんなことがどうでもよく思えるくらいに衝撃的な言葉だった。

「来年、サッカーのワールドカップがブラジルであるだろう?」

「……はぁ」

「その日本の選手団のツアーコンサルティングを君に任せることにしたよ」

「……」

な……に?

今、なんて言った?

「すみません。何の……ツアーコンサルティングですか?」

「ん? だから、サッカーの日本代表選手団のだよ」

“何を言っとるんだ君は”と言わんばかりの表情で私を見る常務の目の前で、私の思考は停止してしまった。

サッカーの日本代表。

A代表のことだ――……。

「――……っ」

息を呑む私の指先が、だんだん冷たくなっていく。