「航太、何かいいことあった?」
「へ?」
試合後のロッカールームで、不意に後藤さんにそう話しかけられた俺は、何とも間抜けな声を出してしまった。
「いや、なんかあったのかなぁ……と思って」
そんな俺の様子を特に気に留める様子もなく、最近ちょっと痛みがあるらしい膝をアイシングしながらそう続ける。
「何か俺、変ですか?」
「“変”っつーか……変わった?って感じかな?」
自分でも確信が持てないように、疑問符たっぷりで、前に立つ俺を見上げた。
「覇気があるっつーか。……ん~、昔のお前見てるみてー。まだガキみたいに楽しそうにサッカーやってたお前」
「……」
「まぁ、相変わらずファンの女には無愛想だけど」
そう言って後藤さんは、嬉しそうに笑ったんだ。
もし変化があったとしたら――……
あの夜、美月さんに会えたおかげかもしれない。
美青への、憎むことでしか消化できそうになかった感情が、俺の中で少し変化したんだ。
あれからしばらく考えて。
やっぱり、今更連絡を取ってどうこうしようとは思えなかったけど。
それでも、好きなうちは忘れなくてもいいし、好きな気持ちに気付いているのに、無理に憎もうとしなくてもいいんだって、そう思えるようになった。
いつかその時が来たら、自然に忘れられるんじゃねぇかって思えた。
そしたら、ここ2年間で見えていた景色が変わって見えたんだ。
あの頃のように、ピッチは広く澄んで見えて。
サポーターの歓声も、熱気も、今までのそれとは違うもののように感じられるようになった。
それと同時に、ここ2年の自分を悔いたんだ。
“何やってたんだよ”って、心の底から思った。
ここに来て応援してくれるサポーターに、どんだけ失礼なことしてたんだろうって。

