きせき


「私、あいつ大嫌い。あいつのせいで、おねぇーがどれだけ大変な目に遭ったかっ!!」

「え?」

相変わらず事態をつかめていない俺は、疑問符を含む言葉しか口にすることができずに。

「おねぇーが、あいつと付き合ってるワケないじゃん!! 別れてから、連絡の一本もよこしてないし!!」

「いや、美青の所に連絡してると思いますけど」

「……」
「……」

お互い“なに言ってんだ?”という顔で、見つめ合う。

「正樹がアメリカに行ってから、おねぇーの携帯にすごい嫌がらせの電話とかかかってきて、」

「嫌がらせ?」

「そう。正樹のファンかなんかの女共から」

“ファンの女共”その言葉に、俺の心臓がわずかに反応する。

「おねぇースマホ換えたから、正樹はおねぇーの携帯番号を知るはずないよ?」

「嘘……だろ?」

自分に向かって呟いた、その言葉。

“正樹とやり直す”そう言った美青の言葉は――……

やっぱり嘘だったのか?

――でも。

“ファンの女共”

“嫌がらせ”

美青は俺と付き合って、また同じ目に遭ったんだ。

それってきっと、別れるには十分な理由。

一体なにが本当で、なにが嘘なんだ?

「……」

「お~~い! 聞いてる?」

考え込んで無言になった俺の前で、手をヒラヒラと振った美月さんは、

「とにかく、そういうことだから。私、そろそろ帰らなきゃだし」

一人なにかに納得をして。

“またね!”と、何度も振り返るバウと一緒に、大量の疑問だけを残して暗闇に消えていった。