きせき


「それ、おねぇーの連絡先」

「……え?」

さっきまでの笑顔を引っ込めた美月さんは、俺を見上げながら、

「ごめんね。お節介だってのはわかってるし、航太クンにもうその気はないかもしれないけど……。おねぇーのあんな顔見たら、さ」

申し訳なさそうにそう言って。

「もしよかったら、連絡してみて?」

またほんの少しだけ笑ってみせたんだ。

“連絡してみて”って、あの男は?

「でも、」
「ん?」
「あの男は?」
「……“あの男”って?」

俺と美青が別れた理由を知らない美月さんは、当然あの男とのことを知るはずもない。

「……」

そこまで踏み込むつもりはなかった。

いくら美青の今を知りたいと言ったところで、もう交わることはないんだから。

――それに、俺がよくても、きっと美青はそれを望んでいない。

それがわかっているのに。

「美青は……マサキとかいう奴と付き合ってるんですよね?」

気が付いた時には、もう遅かった。

俺は一体、何がしたいんだ?

自分の意味不明な行動に、大きな溜め息が漏れて、“何でもないです”そう口にしようとした瞬間、

「は!? 正樹!?」

美月さんの素っ頓狂な声が、静かな河原に響いた。

そして驚く俺の目の前で、グッとしかめられるその顔。

「正樹、知ってるの?」
「いや……あんまり。……え?」

予想外の反応に、俺は一人混乱する。