きせき


「すごい苦しそうな顔してたから、それなら観なきゃいいのにって思ったの」

「……」

「でもねー、」

そこまで言うと、にっこりと笑って俺を見て、

「航太クンがゴール決めた瞬間、ホッとしたような顔して笑ってた」

そんな言葉を口にしたんだ。

「……っ」

美青の行動の意味も、言葉の意味もわからなくて――頭が混乱する。

「おねぇー、日本に帰って来てからあんま笑わなくなっててさ、だからそれ見て私も安心したんだ」

「……」

「で、それと同時に“あ~、おねぇーはまだ航太クンのこと好きなんだなぁ”って思ったわけだよ」

――そんなワケない。

フラれたのは、俺の方だ。

「あっ! でも、別に航太クンに“もう一回考えて!”とか、お節介なこと言うつもりは全くないから!!」

慌ててそう付け足したのに、“でもなぁ~……。う~ん”と、顎に手をあて、何かを考えた様子の美月さんは、

「航太クン、今彼女いる?」

唐突に、そんな質問を口にした。

「……は?」

突拍子もないその発言に、間の抜けた声が漏れ出てしまった。

「ん~? 彼女、いる?……あ~、こういうのって、言っちゃダメなの?」

イマイチ状況が整理できない俺に、美月さんはどんどん質問を投げかけてくる。

「いや、彼女はいないですけど」

「えっ!? そうなの!?」

「……はぁ」

「そっかそっか!」

そこまで言って、なぜか満足げに頷くと、彼女は持っていた小さなカバンから手帳を取り出して、そこにサラサラと何かを書き始めた。

「はい!」

そしてそれを、俺の前にスッと差し出したから。

その空気に、反射的にその紙を受け取ってしまった。