きせき


「嫌いに?……俺が?」

俺の様子に、眉を少し寄せた美月さんは、少し考え込むように首を傾げていて。

「美青がそう言ったんですか?」

思わず、そう口にしてしまった。

それを聞いたところでどうにもならないし、それどころか、ますますあいつに嫌悪感を抱くかもしれないのに。

後悔にも似た気持ちがこみ上げる俺に、美月さんは言ったんだ。

「ううん。おねぇーは……何も言わない」

少し悲しそうに俯いて、そう口にする。

「おねぇー仕事長引いて、ちょっと前に日本に帰って来てさ」

「そう……なんですか」

美青が、日本にいる。

――あの男も一緒に?

「それで私、おねぇーに言っちゃったの。“1年以上もほったらかしで、航太クン可哀そう!!”って」

“無神経だよね”

そう、付け足した美月さんは、ゆっくりと話を続ける。

「そしたらおねぇーが、“航太とは別れた”って」

「……」

そうだよ……。

「“航太とは、離れるしかなかった”って今にも泣きそうな顔して言われて……」

「泣きそうな顔?」

どういう事だ?

そもそもあいつは、あの男とよりを戻したのに――……

“離れるしかなかった”ってなんだよ。

――別れた事を、俺のせいにする為?

嫌な想像をして、胸の奥にドロドロとした感情が芽生えた俺は、思わず唇を噛んだ。