きせき


「あ……れ?」

やっとバウに追いついて、苦しそうに息をしながら俺を見上げたその子は、

「美月……さん?」

そうだ。

数回しか会ったことがないけど、憶えてる。

美青の妹の美月さんだ。

俺の問いかけに、心底驚いた様子の美月さんは、その場で何も言わずに立ち尽くしていて。

「バウバウ!!」

バウの大きな鳴き声でハッとしたように俺に頭を下げると、

「久しぶりだね、航太クン。バウ……ごめんね! ビックリしたでしょ?」

ほんの少し笑って、そう俺に話しかけた。

昔より少し落ち着いたその声は、美青の声にどこか似ていた。

「……」

思わず、言葉に詰まってしまった。

2年間、接することのなかった美青を強く感じるものに、信じられないくらい胸が痛んだ。

「……航太クン、だよね?」

何も言えずにいる俺に、少し心配そうに首を傾げた美月さん。

「……はい。お久しぶりです」

「ホントだね。まさかこんな所で会うとは思わなかったよ。ちゃんとお化粧してくれば良かった」

そう言ってまた笑った美月さんは、小さな沈黙のあと、俺を真っ直ぐな瞳で見上げた。

「……おねぇーと、別れたんだよね?」

その言葉に、心臓がドクドクと痛いくらいに反応する。

「……はい」

「そっかぁ」

「……」

「……」

「おねぇーのこと、嫌いになっちゃった?」

「……え?」

サラサラと流れる水音に、溶け込んでしまいそうなほど小さなその声は、どこか切なさを含んでいる気がして。

一瞬思考が停止する。