きせき


こんな所にいても仕方ないだろ。

そう思って、ゆっくりと立ち上がったその時……。

「バウバウ!!」

「……っ」

懐かしく耳に響くその鳴き声に、思わず振り返った。

また凄い力で引っ張ったのか、飼い主の手から離れたのであろうリードを引きずったバウが、俺の足元で嬉しそうにその尻尾をブンブンと振っている。

まるで、あの頃と同じように。

「バ……ウ?」

俺の言葉に反応したバウは、ちぎれるんじゃないかと心配になるくらい、ますます大きくその尻尾を揺らす。

「ちょっと、バウってばーー!!」

ドクン。

ドクン。

どんどん速くなっていく、心臓の音。

飼い主は――……

まだ夕闇で暗くなった視界には映らない。