きせき


「ファンって言っても、色々いるからな。お前が責任感じる必要はねぇぞ」

真っ直ぐ俺に向けられた視線に、思わず息を呑む。

「なに言ってんすか、後藤さん。もう気にしてないですよ。彼女と別れたのも、あれとは全然関係ないことだったし」

「……そっか。てっきり彼女守るために別れたのかと思ったんだけどな。でもって、あの一件で女嫌いになったのかと思ったんだけど」

“変なドラマの見すぎか”

そう言って、後藤さんは笑った。

「本当に、今はサッカー忙しいし、彼女とか大事にできそうにないんで」

「……なら、いいんだけど」

そのまま少し間をとった後藤さんは、ふと何かを思い出したように、また口を開いた。

「そう言えばお前、試合中観客席よく見てるよな」

「……え?」

急な話題の転換のせいもあったんだろうけど。

それよりも俺は、その後藤さんの言葉に驚いて、思わず声を上げてしまう。

「いや、集中してねぇとか、そういうこと言いたくて言ってんじゃねぇから、別に気にしなくていいんだけど」

「……」

「ゴール決めた瞬間とか、どっか一点見てボーっとしてるっていうか」

「……っ」

動揺するな。

顔に出すな――……。

「それってさ、」

その続きが予想できた。

予想できたから、俺は……。

「俺、ピッチの上からスタンド見るの昔から好きだったんで。癖なんすよ」

後藤さんの言葉を遮って、わざと明るく、否定の言葉を口にする。

さっきの後藤さんの言葉の続きは――……

“あの子探してるんじゃねぇの?”

言葉は違っても、きっとそんなニュアンスの言葉が続くんだろう。

「……そっか」

「はい。……すいません。今日このあと用事あるんで、俺そろそろ帰ります」

「お~、そっか。じゃーまた練習でな」

「はい。お疲れ様でした」

手をヒラヒラと振る後藤さんに頭を下げた俺は、ロッカーを閉めて足早にその部屋を後にした。