きせき


急に静まり返ったロッカールーム。

誰にも聞こえないくらいの溜息を漏らした俺に、

「お前さぁー……」

不意に声がかけられた。

「もしかして、まだあの時のこと気にしてんのか?」

「……」

ドクン。

“あの時”?

「“あの時”って……何っすか?」

この人は、何を知っているんだ?

警戒したような視線を送った俺に少し首を傾げ、困ったように笑った後藤さんは、静かに話を続ける。

「そうだよな。あの時、幹部連中は必死に隠してたもんな」

ドクン。

「――……っ」

思わず息を呑み、見開いた瞳で後藤さんを見つめた。

「あの頃さ、よく気分転換でユースの試合観に行ってたんだよ」

「そう……なんですか」

その話がどこに繋がるのか想像ができなくて、何となく濁った返事になってしまう。

「用意してもらった席のすぐ近くに、いつも女の子の2人組がいてさ。最初は航太のファンの幹部の娘か何かかと思ってたんだ」

「……」

「でも、片方の子があんまりにも必死に――自分のことのようにハラハラしながら航太のこと応援しててさ、」

その頃を思い出したのか、クスッと笑った後藤さん。

「ついつい、お前とその子を観察してたわけだ」

「……」

「航太ー、お前……ゴール決める度にその子に向かって、手ぇ伸ばしてただろ?」

「……」

少し視線を逸らした俺に気付いているはずの後藤さんは、止めることもせず、静かに言葉を繋いでいく。