あの日、航太の家からどうやって帰ったのか……。
私の頭の中からは、その記憶がすっぽりと抜け落ちていた。
雨に濡れて帰ったおかげで、家族は泣いたことには気付かなかったみたいで、それが唯一の救い。
そこから家族にアメリカに行くことを告げ、散々文句を言われて、今に至る。
「あ~ぁっ!! 一年も離れ離れなんて、航太クン可哀そう!」
美月のその言葉に、表情を変えることもなく、
「仕事なんだから、しょうがないの!」
そう答えられる自分が許せなくて、逆に笑えた。
航太のことは、家族には何も言わなかった。
ううん。
“言えなかった”。
私が航太と別れたことで、あの時の、挨拶に来てくれた時の航太の気持ちが嘘だと思われるのが嫌で言えなかったんだ。
胸が痛んで、静かに息を吐き出した私の耳に届いた、飛行機の最終アナウンス。
「あー、もう行かなきゃ!」
そう言ってニッコリと笑って。
“またね”と笑いながら手を振った私は、振り返ることなくアメリカへと旅立った。

