きせき


「正樹から連絡があったの」

「……え?」

その言葉に、航太は明らかにそれまでとは違う表情を見せた。

「元カレ」

「……」

「正樹から連絡がきて、仕事が軌道に乗ったんだって」

何も言わず、私の目を真っ直ぐ見つめる航太に思わず声が詰まる。

「私も、アメリカに行くことを伝えたの。そしたら……ね、もう一回やり直したいって」

「……っ」

息を呑む航太の表情が、スッと変わった。

「航太も見てたでしょ!? 私たち、嫌いになって別れたわけじゃなかったから、だから……」

――航太。

「やり直そうと思うの」

「……」

何も言わず、私をじっと見つめる航太。

広い部屋には、雨音だけが響き続ける。

――だけど。

「美青、ホントのこと話すつもりはない?」

「――……っ」

航太は、わかっているんだ。

私が航太から離れられないことも、航太をどれだけ愛しているかも。

それでも私は、もう引き返せないんだよ……。

航太……ごめんね。

「ホントのこと……ねぇ」

クスッと鼻で笑った私は、航太の瞳を見上げる。

「私、疲れちゃった。だって、航太はいつもサッカーばっかりだし。まともにデートもできないんだよ?」

「……美青?」

「ちなみに、正樹のこともホント。正樹、今度新しいオフィスを任されることになったんだって」

「……それで?」

航太の瞳に、悲しみと、ほんの少しの怒りの色が射す。