きせき


「ん? どした?」

いつもと同じ口調で振り向いた航太。

何も疑わないその瞳に、決心が揺らぎそうになる。

「航太、あのね……」

声が、震える。

「……」

そんな私をじっと見上げた航太は、読んでいた雑誌をパタンと閉じて起き上がり、私を真っ直ぐ見据えた。

「美青、どうした?」

「航太」

ドクン。

「ん?」

ドクン。

「私と、別れて欲しいの」

だけど、やっと絞り出したその言葉に、驚く様子もない航太。

じっと瞳を見つめられ、上手く呼吸ができない。

「別れたい」

震える手を握りしめて、もう一度、同じ言葉をくり返した。

「何で?」

「……」

「何があったか、ちゃんと話せよ」

「……」

「美青の様子がおかしいのなんて、ずっと気付いてた」

航太は頭を掻くと、ソファーから立ち上がって私の前に立つ。

航太――……。

ダメだよ。

こらえていた涙が、静かに頬を伝っていく。

「美青、俺は別れるつもりないよ?」

「無理なの」

「だから……なんで?」

溜め息を吐いて、私の濡れる頬に大きな手をそっと添えた。

お願いだから、そんな優しい目で見ないで。

「私、アメリカに行くの」

「……え?」

少し驚いた様子を見せた航太だったけど、私の涙をギュッと拭いて、

「それは別れる理由にならないよ」

そう言って、首をかしげる。

「アメリカに行こうが、行くまいが、そんなの関係ない。俺も美青も、そんなことで気持ち離れねぇだろ」

「……」

「違う?」

私を覗き込む航太の瞳は、どこまでも真っ直ぐで。

私の胸を、ひどく締めつける。