きせき


「行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい! 気を付けてね」

あれから私は、急な出張が入ったと嘘をつき、家族が誰もいない時間に家に帰って、必要な分の荷物を航太の家に運び……

会社にも一度顔を出して、階段から落ちたという事と、アメリカに行くという返事を伝えた。

ありがたいことに引き継ぎもほとんど必要ないし、アメリカに発たないといけない日まで、しっかり休んでケガを治すようにと命令されたので……。

私は毎日、心おきなく航太の部屋でゴロゴロしていた。

――航太の部屋に来て、3日。

来週の月曜日にはアメリカに発たないといけない。

私に残された時間は……あと5日。

毎日、何事もないかのように過ごしていた。

制服を着て高校に向かう航太をキスで送り出し、練習を終えてユニフォーム姿で帰ってくる航太を、またキスで出迎える。

夜ゴハンの準備をする私を、後ろから抱きしめた航太は、

「こういうの、夫婦みてー」

そう言って、楽しそうに笑った。

毎晩二人でお風呂に入って、ベッドの上で熱を伝え合う。

航太はいつも、宝物を扱うように私を抱きしめて、全身に丁寧にキスをしながら“可愛い”を繰り返す。

“……美青”

私の名前を愛おしそうに呼ぶその掠れた声が、私の体を甘く痺れさせて……。

何もかも忘れてしまいそうになるくらい、私の頭を真っ白にしてくれる。

本当なら、これ以上ないくらい幸せな時間なのに。

航太、ごめんね。

あなたに抱きしめられながら、

あなたに嫌われる方法を考える私は――……

本当に、最低の女だ。