きせき


「カラダ、温まった?」

柔らかいお湯が揺れるバスタブで、私を後ろから包み込むように優しく抱きしめる航太が、からかうように私の顔を覗き込んだ。

「うん、温かい」

その広い胸に、身体を預ける。

いつもよりも素直な私を、クスッと笑った航太は、

「あんなエロい美青、初めて見た」

いたずらっ子のような顔をして、そんなことを言う。

「うるさいなぁ!……いいでしょ、時々は!」
「うん、大歓迎。抑えきかなくなっちゃったもん」
「……ヘンタイ」

その顔めがけて思いっきりお湯をかけた私に、航太は相変わらず楽しそうに笑っている。

「お湯かけんなよー!! ホントのこと言っただけだし」
「わかったってば!! もういいから!!」

だって、しょうがないじゃない。

体だけ繋がったって、仕方がないことくらいわかってる。

それでもそうしないと不安で怖くて、押しつぶされそうで……。

「ごめんな」

「え?」

思わず下を向いてしまった私に、航太が静かに言葉を落とした。

何に対しての“ごめん”なのかが分からないでいる私の身体の傷に、そのままそっと優しく触れるから……。

やっと理解した。

「――ごめん」

苦しそうに顔を歪めて、そう口にした航太の頬に手をあてて、

「航太のせいじゃない。それに、もう航太に治してもらったし!」

私は笑って答える。

「もし万が一、航太のせいだったとしたら……航太に責任取ってもらうし?」

「……」

「ねっ! だから、そんな顔しないで!」

「……ん」

ニヤッと笑った私に、航太も少しだけその口元を緩めて笑ってくれた。