きせき


引きずられるようにエントランスを抜けて、エレベーターに押し込まれ、航太に肩を抱かれたまま部屋に入った。

「美青、寒いか?」

「……え?」

「とりあえず風呂に――……」

カタカタと震える私を気遣う航太は、どこまで優しくて……。

「ねぇ、航太」

ゆっくりと振り返った航太に、ぎゅっと抱きついて、その胸に顔をうずめる。

――何も変わってないのに。

航太の温もりだって、香りだって、
何も変わっていないのに。

「美青?」

「……温めて」

震える唇から紡がれた言葉に、航太は驚いたように瞳を見開く。

「美青?……どうした?」

「どうもしてない。……お願い、温めて」

戸惑う航太の首に腕をからませ、その唇に噛みつくようなキスをした。

驚いて少し開いた口に舌を滑り込ませ、航太のそれにゆっくり絡ませる。

「……んっ」

小さな吐息が、夜景に照らされた部屋に響いて、それがまた私の胸を痛いくらいに締めつける。

わかってるの。

こんなの無意味だってことくらい。

だけど――……。

ゆっくりと離された唇。

航太の瞳に至近距離で捉えられた私は、思わず息を呑んだ。

「美青……体は?」

「平気」

平気だから、

今だけでいいから、

航太の温もりで、全部全部忘れさせてほしい……。