きせき


「……美青!? 何やってんだよ、こんなとこで!!」

雨音を切り裂くように聞こえたその声に、私はゆっくりと視線を上げた。

「……」

何も言えない私に駆け寄った航太は、降り続く雨から守るように、自分の腕の中に私を閉じ込める。

「ごめん航太。何も言わないで帰っちゃって……」
「それはいいから!! とりあえず、中に入ろう? 身体、温めないと」

少し慌てた様子の航太は、私の手をそっと取ってエントランスに向かって歩き出そうとする。

「航太」

「……美青? どうした?」

だけど私は、そこにへばりついたように、動くことができなくて……。

手を引いてもついて来ない私の顔を、航太が心配そうに覗き込んだ。

「家の前まで行ったんだけど、この傷の説明が思いつかなくて……」

どうしよう。
私は、どういたらいい?

「結局、航太のところに来ちゃった」

半分は本当で、半分は嘘。

家族に心配をかけたくないという気持ちが半分。

残りの半分は、“その時”が来るまで、航太と一緒にいたいと思ってしまう、私の弱い心がついた嘘。

「美青、話は後でにしよう」

「ねぇ、航太?」

「……ん?」

「しばらく、泊めてもらってもいいかな?」

「……」

「ダメ……かな?」

「そんなこと、聞く必要ない。好きなだけ居ていいから」

「ありがとう。ごめんね、航太」

「いいから、早く中に」