きせき


外に出ると、雨が降っていた。

真っ黒な空から零れ落ちる大粒の雨。

大通りに出た私は、あけちゃんにタクシーを拾ってもらい、心配する彼女に精一杯の笑顔を向けると、そのシートに身体を沈めた。

傷だらけの私を、運転手さんはミラー越しにチラチラと眺めている。

「……」

そりゃそーだよね。

もう涙は止まったものの、目は腫れてるし、こんな全身にガーゼだの湿布だの貼られていたら、普通は怪しむよね。

「どちらまで?」

おもむろにかけられたその言葉に、少し悩んで、

「とりあえず、駅の方に向かって下さい」

そう告げると、タクシーはゆっくりと走り出した。

バシャバシャと水が跳ねる音が耳に響いて、そっと目を閉じる。

どうしてこんなことになったんだろう……。

私がもっと気を付けていたらよかった?

そしたら、こんな決断をしないで済んだ?

「……」

もしかしたら、さっきのことは夢だったのかもしれないなんて、ばかげた絵空事まで思い浮かべて。

だけど、握りしめた手に走る痛みによって、一気に現実に引き戻される。

航太。

さっきから、思い浮かぶのは航太の顔ばっかりで……。

「逢いたい――……」

小さくつぶやいた言葉は、窓に当たる雨音に消えていった。