きせき


「今日のことが、チーム内で問題になってる。誤魔化そうにも、見ていた人が多すぎた……」

「……」

何も言えずにただ頷けば、白いシーツにポタポタと涙が零れて、灰色の染みを作る。

「美青ちゃん」

お兄さんは、意を決したよう私の名前を呼ぶと、少し間をおいてから大きく息を吐き出した。

「上から、航太と美青ちゃんを別れさせるように言われた」

「――……っ」

この感情を、どう例えたらいいんだろう。

体中の血液が抜けていくようなその気持ちの悪い感覚に、吐き気にも似た何かがこみ上げる。

それがどんどんと痛みに変っていって……。

私の胸を襲ったのは、今までに感じたことのない、息が止まるような強烈な痛みだった。

「なに……それ。そんなの酷すぎる!! あんた達何言ってんの!? 何でそんなこと……!!」

短い呼吸で、何とか息を整える私の目の前で、お兄さんにつかみかかったあけちゃん。

――あけちゃん、ごめんね。

あけちゃんもきっと、私と同じように……苦しんでくれているんだよね。

「あけちゃん、大丈夫。大丈夫だから」
「でも、美青!!」

「あけちゃん!! お願い」
「……」

「お兄さん、そのことを航太には?」
「……言ってない。航太は、きっと言っても聞かない。きっと今のあいつは、サッカーよりも美青ちゃん、君を選ぶだろう」

「……」
「身勝手な話だっていうのは、十分承知している。こんなことを君に頼むこと自体、間違えてるのも解ってるんだ」

「でも、俺もチームも、サポーターも……。あいつを失うわけにいかないんだ」

最後に絞り出すようにそう言ったお兄さんは、下を向いて……

きっと、泣いていた。

頭の働かない私の頬を静かに伝い落ちる涙は、やっぱり止まることを知らなくて――……。

それを優しく拭ってくれる航太は、

ここにはいない……。

「私から……別れればいいんですよね?」

小さくそう呟いた自分の声は、まるで知らない人の声のようで、感情がついていかない。

「美青!! 何言ってんの!? そんなの間違えてる……絶対間違えてるよ!!」

わかってる。

「でも、私……航太が大好きなの」

ずっと傍にいて、航太がどれだけサッカーを頑張ってるのかを、嫌というほど見てきたの。

ここでどれだけあなたが輝いているかを――……

私は、誰よりも知っている。