「美青ちゃん」
「……はい」
目の前には、いつの間にか電話を終えたお兄さんが立っていて、ズキズキと痛む胸を押さえながら、私はなんとか返事を返す。
「今回のこと、本当に申し訳ない」
「やめて下さい!! お兄さんのせいじゃないです。私が……気を付けなかったからいけないんです」
お兄さんは深々と頭を下げて、何も悪くなんてないのに、すごく苦しそうに謝罪の言葉を口にした。
「美青……この人は?」
隣に立ったままのあけちゃんは、事態がつかめないまま、眉間にシワを寄せていて……。
そういえば、まだきちんとあけちゃんにはお兄さんが誰なのかを話せずにいたんだ。
「宮崎さんは、航太のお兄さんなの」
「……え?」
「宮本さん、だったよね?」
「はい」
呆気に取られるあけちゃんにかけられたその声は、さっきよりも幾分柔らかさを取り戻した声。
「以前会った時は、きちんと挨拶ができなくて悪かったね」
「……いえ」
お兄さんは、少しだけ笑顔を浮かべながらそう言うと、一瞬その視線を航太が出て行ったドアに移し、それをゆっくりと私に向けた。
「美青ちゃん、航太が戻ってくる前に少し話がしたいんだけど……いいかな?」
――お兄さんのその言葉に、心臓が嫌な音を立てた。
航太が、戻ってくる前に?
「できれば、二人で話したいんだけど……」
そう言って、申し訳なさそうにあけちゃんに視線を向ける。
あけちゃんは、お兄さんの言葉を、遠回しに“席を外して欲しい”と言っているのだと理解していたようだけど。
チラリと私にその瞳を向けて、
「今、美青から離れられません。私だって巻き込まれたんです。聞く権利はあると思います」
私の手をギュッと握って、ゆっくりとそう口にした。

