「航太、いい加減にしろ」
何も言えないでいる私の目の前で、怒鳴った航太の腕を掴んだのは、さっきまでスタッフと話をしていたお兄さんで……。
「美青ちゃんを責めるな」
「……」
「今回の件は、こっちに任せろ。お前は関わるな」
再び静けさを取り戻した医務室に、お兄さんのどこか冷たい声が響いた。
「“関わるな”? 美青がこんなにされたんだぞ? それなのに、関わるなだと?」
「航太、お前はチームの人間だろう」
「チームの人間だろうとなかろうと、美青をこんなにされて黙ってられっかよ!!」
「航太!! 頭冷やして少し冷静になれ。……とにかく美青ちゃんに謝って、お前は着替えて来い」
息を呑む私と、下を向いたままのあけちゃんの目の前で、静かにそう言い放ったお兄さんは、鳴り出したスマホを胸ポケットから取り出して、それを耳に当てる。
その様子を、痛みのせいなのか、まだぼんやりとする頭で眺める私は、どうしたらいいのかわからなくて……。
視線を移した先の航太は、強く拳を握りしめ、自分の額にそれをあてて……。
気持ちを落ち着かせるように、細く長い息を吐き出した。
「美青、後で話そう」
だけど私は、どうしても冷静になんかなれなくて。
視線も合わせずにそう言い残し、そのまま医務室から出て行った航太に、言葉を返すことさえできなかった。
だって、あんなに怒った航太も、悲しそうな航太も……私は初めて見たから。

