きせき


「違う……航太、違うの!! それはあけちゃんの誤解で……っ」
「美青、ちょっと黙ってて。……あけちゃん、それどういうこと?」

慌てて訂正をしようとした私に向けられた航太の瞳も、低い声も、いつもの彼のものとは全然違って……。

それがゆっくりと、あけちゃんに向けられる。

「美青、航太君のファンの女の子たちに嫌がらせを受けてる」
「……」

「この前の試合の時も、美青、頭から水ぶっかけられて」
「……っ」

悔しそうなあけちゃんの声に、航太が息を呑み込むのがわかった。

「トイレでも散々嫌味言われて、今日なんて……っ」

あけちゃん、お願いだから。

お願いだから、言わないで――……。

「そいつらが、階段から美青を突き落としたんだよ!! ねぇ、ホント何なの!? 美青がなにしたって言うの!?」

手をギュッと握りしめる私の前で、最後は、もう泣き叫ぶような声を上げたあけちゃん。

「……」

そんな彼女を、しばらく呆然と見つめていた航太の表情がスッと変わった。

「……っ」

今まで見たことがないくらい怒りに満ちたその表情に、私は思わず息を呑む。

「美青?」
「……」
「美青、なんで言わなかった?」

「……ごめんなさい」

「謝って欲しいんじゃない。なんで、何も言わなかった?」
「……」

――航太。

「なぁ、美青。俺ってそんなに頼りない?」

そう言った航太の瞳は、すごく悲しい色をしていて……。

「違う!!」

胸が痛んでどうしようもなくて、気が付いたら思わずそう叫んでいた。

だって、こんな風に航太を悲しませたかったわけじゃないの。

「違うの!! そうじゃなくて……。航太に余計な心配かけたくなかった」
「余計って何だよ!! 美青のことだろう!? しかも俺が関わってる!!」

「それが何で余計なんだよ!!」

今まで見たこともないくらいの剣幕で、そう怒鳴った航太に……

私は、何も言えなくなってしまった。