「階段から落ちたって……。兄貴に聞いた瞬間、心臓止まるかと思った……」
私が目を覚ましたことへの安堵からか、大きく息を吐き出した航太が、ベッドサイドにしゃがみ込む。
“階段から落ちた”
「ごめん。なんか……ボーっと、しちゃって」
「ちょっと、美青!? あんた何言ってんの!?」
「……」
だって、航太には知られたくない――……。
すべての事情を知っているあけちゃんは、まだ真実を隠そうとする私を、“信じられない”という瞳で見つめる。
「あんた、落ちたんじゃないでしょ!?」
「あけちゃん、やめて!!」
「でも……っ!!」
一瞬、シンと静まり返った医務室。
その沈黙を破ったのは、航太だった。
「……美青?」
何かを探るように、真っ直ぐ私を見つめる航太の視線。
それから逃れたくて、誤魔化すように前髪に触れた。
「ごめん航太、何でもないから。心配かけちゃってごめんね」
「何でもないじゃ済まされない!! ちゃんと航太君に話しなよ!!」
だけどあけちゃんは、それを許してはくれなくて……。
「……え?」
荒げられたあけちゃんの口調に事態がつかめず、困惑した航太の声が医務室に響く。
「あけちゃん!!」
制止した私の大きな声が、聞こえていないはずなんかないのに。
それを無視したあけちゃんが、航太を真っ直ぐ見据えて――……
「美青は、航太君のファンの子に突き落とされたんだよ」
静かな声で、そう言い放った。

