「いや~、美青のおかげで、私もすっかりサッカー通みたいになってるわー。こんなに試合観られる人ってそうそういないよね。しかもタダで!!」
「そうだよ! ちゃんと感謝してよ? 私に」
「は? 美青じゃないでしょ? 航太君でしょ?」
試合が終わって、帰宅するファンの波の中、興奮冷めやらぬあけちゃんと並んで歩いていた。
いつものように、二人で言い合いをしながらスタジアムの階段を下りる。
ざわつく通路を通り過ぎて、階段にさしかかった私が、
「そうだけど、もとはと言えば私がねっ……」
そう口にしたのと、ほぼ同時だった。
“ドン――……!!”
背中に感じた、強い衝撃。
「美青!!」
隣に並んで歩いていたはずのあけちゃんの声が、なぜか背中越しに聞こえる。
振り返った瞳に、伸ばされたあけちゃんの手が映って……。
そこに、それを反射的に握ろうとした自分の手が映り込む。
反転する視界の端――あけちゃんの伸ばした手のその後ろに――あの女の子たちが見えた。
それに気づいた次の瞬間、全身に痛みが走り、私は思わず頭を守るようにうずくまる。
「美青!! 美青!?」
「おい!! 女の子が階段から落ちたぞ!!」
「誰か、会場の救護スタッフ呼んで来い!!」
駆け寄って来るあけちゃんの気配と、たくさんの人の声。
何が……起こったの?
全身に激痛が走って、ヒューヒューと音を立てるだけで、うまく息ができない。
何か言いたいのに、それを言葉にすることもできなくて。
私はグルグルと回り出した視界に吐き気を覚えながら、ゆっくりと意識を手放したんだ。

