「あけちゃん、もういいよ。これ、お水みたいだし……そのうち乾くでしょ」
相変わらず怒り狂っているあけちゃんに、そう声をかける。
「でも――!!」
「あけちゃん」
あけちゃんの目をじっと見つめ、小さく首を振る。
「あなたも……もう大丈夫だから。早く席戻らないと、試合終わっちゃうよ?」
「はぁい。ホントごめんなさぁい!」
言葉のわりにあっさりと戻って行く彼女を見ると、やっぱりわざとだったのがよく分かった。
「ちょっと美青!! タオルくらい買ってこさせればよかったじゃん!!」
「あけちゃん」
動揺しないように、深呼吸をしてみたのに……。
手が、小さく震える。
「……美青?」
「あの子、航太のファンだと思う」
「……え?」
私の言葉に目を見開いたあけちゃんは、次の瞬間、パッと後ろを振り返った。
「……ふざけんな」
小さく呟いたあけちゃんの目に映ったのは、反省なんか全くしていない――むしろいい気味だと笑い合う女の子の集団。
「あけちゃん。航太には言わないで」
「はぁ!? アンタ何言ってんの!?」
「航太は関係ない」
「関係ないことないでしょう!?」
「航太のファンだけど、航太は何も悪くない」
「……」
「航太を変なことに巻き込みたくないし、気にして欲しくない」
「……美青。でも、ホントに大丈夫なの?」
「……」
“大丈夫”が何に対しての大丈夫なのかがわからない今は、何とも言えないけど……。
だけど、航太は優しいから。
きっとこんなことを話したら、すごく気にしてしまう。

